プロローグ
「悲しみと憎しみは連鎖する。でも、必ずどこかで終わる。そうでなきゃ救いがない。
僕はどこかで鎖は切れると信じている。
これから始まるのは、確かに悲しみと憎しみと絶望の物語だ。
でも、いつかは誰しもが救われるんだ。
これから始まるのは救いと愛と希望の物語でもある。
さあ、はじめよう。長い話になる。
最後まで語れるかも怪しい。それでも、僕は語る。僕は、語ろうとするんだ」
男は、こちらを見た。彼の瞳は、まるで深い穴のようだ。真っ暗なのだ。真っ黒なのだ。
私は男の何かを見透かすことが出来なかった。私は諦めたのだ。
だから、ただひたすら、男の話に耳を傾けることにしたのだ。
男が何か、遠い国の、昔の言葉を口にした。
ふるい、呪いの言葉のようだった。